
Evolution Championship Series、通称EVO。
テニスのウィンブルドン、ゴルフのマスターズのような、またはボクシングのヘビー級タイトルマッチを想像してもらってもいい。それらと同じように、格闘ゲーマーに「世界一の大会は何か」と聞いたときに間違いなく真っ先に名前があがるのがEVOだ。
夏の一時期、世界中から10000人以上の格闘ゲーマーがラスベガスのマンダレイ・ベイホテルのイベントアリーナに、自らのコントローラーを抱えて集結する。最大のタイトルであるストリートファイターV決勝の視聴者数は500万人に迫り、その年の格闘ゲーム界の顔になるプレーヤーの誕生を皆が見届けるのだ。
そのEVOに、日本の1人の若者が挑もうとしている。
30代のトップ選手が跋扈する世界で、弱冠20歳にして北米の名門Team Liquidに所属する竹内ジョン。キャリア2度目の参戦となるEVOについてこう話す。
「EVOを最初にちゃんと見たのは2015年、日本のももちさんが優勝した時ですね。当時の自分は、同じキャラを使っている人の中でも国内10位そこそこのプレーヤーで、プロになろうともなれるとも考えていませんでした。それでも世界にはこんなに大きい大会があるのか、強くなりたい、と思って見ていた記憶があります」
その後竹内ジョンは、国内外の大会でプロたちをなぎ倒しながら頭角を現した。そしてEVOの舞台を初めて踏んだのは、2017年だった。
複数の大会で優勝を経験してはいたものの、EVOはやはり特別だったという。
「その頃にはもうプロを意識していたので、EVOに行かないと始まらないという感覚はありました。2017年のはじめにフランスのカンヌの大会で優勝して賞金をもらった時に『このお金でEVOに行けるな』と思ったのを覚えてます。
でもラスベガスの行き方なんて全然わからないから、仲良くしてもらっている先輩ゲーマーに飛行機とかホテルの手配をお願いしました。本当に助かりましたね。
大会はかなり早い段階で負けてしまったんですが、本当に得るものの多い体験でした。
世界中のゲーマーが集まっているので練習相手はいくらでもいるし、決勝の雰囲気は本当にすごくて、配信ではわからなかった一体感や盛り上がり、空気感は忘れられません」