
二輪引退後、四輪に転向するライダーを耳にするが、MotoGPで9回世界チャンピオンになった“生きる伝説”、バレンティーノ・ロッシ(Valentino Rossi)は、新たな四輪の舞台でも頭角を現している。
イタリアのウルビーノ出身、現在43歳のロッシは26シーズンにわたり世界的なアイコンとして何百万人ものファンを集め、驚きの記録を打ち立てた。「ロッシ」と言えば「一流のモーターサイクルレース」と言われるまでになった。実際、彼が独力で現代のモーターサイクルのグランプリレースの流れを形作ったという事実に反論はできない。
際立っているのは選手権のタイトルだけではない。圧巻のグランプリ出場432回、ポディウム235回、優勝115回を誇るロッシのレース技術と天性のスピードは、世界中のファンがその目でその独特なスタイルと天賦の才を最高のバトルの数々で確かめることができた。
ロッシは、125ccクラス、250ccクラス、500ccクラスにおいて、MotoGPの世界選手権で優勝した史上たった一人のライダーであり、モーターサイクルの歴史で400以上のレースに出走した唯一のライダーだ。ロッシは最高峰クラスで89勝を挙げている。
グランプリレースの歴史上、この記録に手の届いた人間は一人もいない。
ロッシの存在は非常に大きい。2021年のMotoGPチャンピオン、ファビオ・クアルタラロ(Fabio Quartararo)にとってもそうだ。クアルタラロが彼の人生をMotoGPに捧げることになったインスピレーションはドクターだった。「バレンティーノは昔も、今も僕のアイドルだ。6歳のとき彼のレースを見た。2005年ヘレスの最終コーナーで彼は追い抜いた。それが、このレースに出たい、MotoGPライダーと戦いたいと思った瞬間だった」とクアルタラロは説明した。
四輪のVR46
もちろん、2021年11月にロッシがレーシングスーツを完全に手放し引退を宣言したとき、彼が何らかの形でレースを続けるであろうことは当然のことと受け取られた。スピードと競争の人生は、簡単にマイクドロップできるようなものではない。
ロッシは、MotoGPで自分のVR46レーシングチームを運営する傍ら、ファナテックGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ・パワード・バイAWSで活動の推進力になることに尽力していた。チームWRTでアウディR8 LMSを運転する契約を結んだロッシは、4月初旬にイモラでシーズンが始まって以来、新しい四輪マシンでお気に入りのサーキットに挑んできた。